営業・販売活動の現場で、注目を集めている提案型営業という活動に関する理論的考察の出発点として、提案型営業という概念を定義し、既存の販売管理論、マーケティング論の文脈において、かかる活動を捕らえなおし、今後の研究のための仮説を導出した論文。本稿において、提案型営業は、単に製品を売り込むのではなく、その製品の使用方法についての何らかの提案を含む取引促進活動と定義される。かかる提案型営業は、既存の販売管理論における問題解決アプローチと類似したものであるが、いくつかの点で既存研究と異なっている。この相違点は、提案型営業という活動が、市場を垂直的多段階構造を持つものとして認識するという、風呂勉の言う「マーケティング論的市場認識」に基づく活動であることに由来するところが大きい。本稿では、こうした観点に立って、提案型営業の現実と既存研究の間の齟齬を整理し、提案型営業活動が市場の垂直多段階性を明確に意識して行われるほどその成果が高いという仮説を提示した。(日本商業学会平成7年度公募プロジェクト研究助成金による研究の一部)