本研究の目的は、自動車販売会社における営業担当者の知識獲得プロセスを検討することにある。販売方略に関する手続的知識は、定性的及び定量的な質問紙調査によって測定した。分析対象となる108名の営業担当者を、経験年数に応じて新人群(営業経験3年未満)、中堅群(3~9年)、ベテラン群(10年以上)に分類した上で、手続き型知識と販売業績について相関分析を行ったところ、営業経験を積むほど手続き的知識と販売業績の正の相関が強まることが明らかになった。この結果は営業担当者の知識が経験によって宣言的レベルから手続き的レベルに変換されるというAnderson(1982,1983)の認知的スキル獲得モデルと整合的であり、またこの結果からエキスパート研究における10年ルールが営業担当者にも該当することが確認された。(共著:松尾睦、細井謙一、吉野有介・楠見孝)