本稿は2010以降のシンガポール、台湾、タイ、マレーシアを対象に、1997年通貨危機後に多くの東アジア諸国が採用したドルを主要ターゲットとするバスケットペッグによる通貨管理に対し、人民元の変動がいかなるインパクトを与えているかを考察した。分析の結果、東アジア諸国では、国による差異はあるものの、人民元の変動に自国通貨を連動する為替相場政策を採用しており、ドルのインパクトは相対化されていることが明らかになった。東アジアは事実上、元を基軸としてドル、ユーロの3通貨を含む新たな通貨バスケット制度に移行した可能性がある。