東アジア諸国の金融改革(金融自由化政策)に関し、金融改革を経済成長の起動因とみる見解と経済成長の結果実現可能となりえた政策であるとみる見解の対立がある。マッキノン=ショーらによる金融自由化論は前者の立場に立つが、彼らの議論は本来国内資金の動員・効率的配分による内的な経済成長を説明するものであり、輸出部門の急速な発展に導かれた東アジア諸国(地域)の成長を十分に説明することはできない。これはマクロ経済の安定と健全性規制のみを金融自由化政策の前提条件と捉え、リアル経済の発展から促進される金融深化を重視しないIMF・世銀型の漸進的金融改革の問題点でもある。他方、後者の立場に立つ論者は政策金融と金利規制・信用総量規制等の直接的手段によるマクロ経済管理の有効性を強調する。この場合、確かに東アジアの急成長を遂げた経済において輸出部門が不均整的に発展したことを説明することができる。しかし、金融部門への政府介入が有効に機能したとされる経済は、全て民間部門との連携を維持する高い制度的基盤を有していた事実は重視されねばならない。IMF・世銀型金融改革モデルに代替的な金融改革モデルはそのような制度的基盤の形成をも包括するものでなければならない。