本稿では2000年-2011年7月における東アジア諸国の通貨政策(為替相場政策)を分析した。これまでの多くの実証分析により、東アジア諸国ではドルペッグ崩壊後の1997年通貨危機以降もドルが最も重要な管理対象通貨として採用されると同時に、通貨バスケット構成は国、時期によって異なることが明らかにされた。中でも、通貨危機前とは異なる最も大きな変化として、各国通貨の対円連動性が著しく増大したことが注目された。しかし、本分析の結果、東アジア諸国の対円連動性は2000年後半の世界金融危機の中で、突如消滅したことが明らかとなった。円を含む東アジア諸国の通貨バスケット政策は、単一ドルペッグに代わる新しい通貨政策の基軸を意味したわけではなかった。