本稿では、ライフサイクルを考慮して意思決定を行う家計を想定した場合の課税ベースの選択に関する議論を、社会的厚生の側面から分析するために必要となる家計の選好パラメータに関して考察を行っている。特に、家計がライフサイクル仮説に従い生涯効用最大化を行うことを想定したモデルから導出される最適消費支出決定式を用い、その最適消費支出決定式の1次近似を行い、推計に用いる式の導出と推計に必要なデータの作成し、それに引き続いて、一次近似式の推計から同時点間の代替の弾力性ρと異時点間の代替の弾力性γの符号に関する考察を行った。推計に用いたコーホートデータは、異時点で得られる、異る世代のクロスセクションデータから作成した。その結果、異時点間の代替の弾力性γの符号は正であることが明らかになり、従って、異時点間の代替の弾力性γよりも大きな値をとる同時点間の代替の弾力性ρも正の値をとることが明らかになった。