本研究では、ポライトネス・ストラテジーを決める要因として、ポライトネス普遍理論(Brown & Levinson, 1987)の公式で示されている①「社会的距離(親疎関係)」、②「力関係(社会的地位)」、③「負担の度合い(雑談と依頼の2つの場面)」に、④「文化差(日韓の比較)」、⑤「話し手と聞き手の性差(同性か異性か)」を加え、合計5つの要因を設定した。分析では、言葉遣いの丁寧度に関わるポライトネス・ストラテジーを決める要因の影響について、「決定木(decision tree)」を使って分析した。その結果、まずポライトネスに「力」と「距離」の要因が影響するとするBrown & Levinson (1987)の普遍理論を支持する結果が得られた。さらにその理論を発展させて、社会的な「距離」が決まってから、「力」の関係が次にくるという優先順位まで示した。また、本研究では、「力」と「距離」の要因に続いて、日本と韓国の文化差の影響、話し手が男性か女性かという性別の影響が絡み合ってポライトネスに影響していることを示し、Brown & Levinson (1987)の理論をより精緻化して説明することに成功した。林炫情・玉岡賀津雄・宮岡弥生・金秀眞