従来の研究では、中国人日本語学習者にとって難しいのは、文法事項と言うよりもむしろ人間関係の把握の仕方であると言われてきた。そこで本研究では、上級の日本語能力を有する中国人日本語学習者が、人間関係の把握の仕方を理解した上で適切な敬語表現を選択できているかどうかを、「文法事項」の習得の度合いとの比較において明らかにした。分析の結果、敬語動詞の活用や接続といった文法事項は、本研究の被験者である中国人日本語学習者に細部まで完全には習得されていないと考えられる結果が得られた。また、日本語の敬語習得における中国人日本語学習者の困難点は、その場に居合わせない第三者に対して謙譲語を用いる場合の言い方にあると考えられる新たな知見を得た。宮岡弥生、玉岡賀津雄