日本語や韓国語は、語順が自由な言語である。例えば、‘花子が太郎を殴った’という二項動詞能動文であれば、‘太郎を花子が殴った’と言い換えることもできる。いずれの文も平等な立場で存在するのであれば、両言語は平板型構造(flat structure)の[NP-ga, NP-o, V]を基準としていることになる。しかし、正順語順とかき混ぜ語順が存在すれば、[NP-ga [NP-o + V]]または[NP-o [NP-ga + V]]という階層構造(configurational structure)を持つと仮定される。これを証明するために、文正誤判断課題による実験を行った。その結果、日本語と韓国語の二項動詞能動文では、[NP-ga [NP-o + V]]構造の文が、[NP-o [NP-ga[t + V]]よりも迅速に、しかしほぼ同じ正確さで処理され、正順語順であることが分かった。同様に、日本語および韓国語の三項動詞能動文でも、[NP-ga[NP-o[NP-ni + V]]]の文が、[NP-ni[NP-ga[NP-o [t + V]]]]よりも迅速かつ正確に処理され、正順語順であることが分かった。従って、語順が自由な日本語や韓国語であっても、正順語順が存在し、階層構造を持っており、それがデフォルト(default)として機能していることが証明された。玉岡賀津雄・河原純一郎・林炫情・宮岡弥生