本論文では、外国人に対する敬語教育の簡素化の問題を考察するため、外国人の話す敬語を日本人がどのように感じるかについて調査を行った。その結果、主に次のことが明らかになった。まず、日本人は外国人の話す敬語に対しても寛容である。しかし、逆にどの場面においても、外国人が敬度の高い表現を用いることには抵抗がある。また、外国人に対しては年齢の上下による敬語の使い分けはあまり気にしない反面、親しい間柄では外国人の方に日本人より丁寧な言葉づかいを要求する。そして外国人との接触率が高いほど、外国人の話す敬語に対する評価が厳しくなる。これらの結果の中で、敬語の簡素化を考える上で特に注目に値するのは、外国人との接触率が高いほど日本人は外国人の話す敬語に対して評価が厳しくなるという点である。今後さらに日本国内の外国人数が増加し、日本人と外国人との接触率が増加するならば、日本人は外国人の敬語使用に対して厳しくなることが予想される。したがって、外国人に対する敬語教育を簡素化することには、慎重になる必要があることを示唆した。