本研究は、20世紀半ばから現在に至るまでの日本および中国の経済発展の実態を考察し、これを踏まえて日中間における経済交流の変遷について分析したものである。その結果、日中間の経済交流は、次のような2時期6段階を分けることができた。①日中国交正常化前後の時期における日中間の経済交流は、敵対国間のバーター貿易期(1949-60年)、国交正常化前のLT貿易期(1961-71年)、国交正常化における日中貿易の発展期(1972-1977)、という3段階、②中国改革開放以降の時期における日中間経済交流は、中国改革開放の始動に伴う日中貿易の過熱期(1978-85年)、 政治情勢を背景にした日中貿易の後退期(1986-91年)、中国改革開放の加速に伴う日中貿易の平穏期(1992-2004年)、の3段階である。両国の経済交流は、このような2時期6段階を経て、当初は急速に、近年は平穏に成長したのである。特に2004年中国は日本の第1位の貿易相手国となったこと、また1949年から2004年に至るまでの日中貿易は、中国の各経済発展段階に大きな役割を果たしたこと、さらに中国の改革開放以降、中国が「世界の工場」から「世界の市場」へ変身し続ける中で、日中貿易は双方の経済発展を促進したこと、などが明らかになった。 本研究に続く課題としては、日本の対中経済協力(ODA)はどのような特徴を持っているのか、どうのように変化してきたのかという事実関係を確認することと、そしてそれが日中間の経済交流の中にどのような役割を果たしたかを検証することである。また中国の対日貿易赤字が今後の日中間貿易摩擦の主要原因となることが予想されること、そしてこのことが日中間における「政冷経熱」の現状と相まって、日中間における経済交流に大きな影響を及ぼす可能性があると考えられるので、この視点からの分析も必要であろう。さらに上述の問題を含む日中経済交流の比較研究を通して、日中間両国が今後どのように周辺諸国を取り込んで、東アジア経済の持続的に発展に貢献できるか、その可能性を探りたい。