本研究では、日中平和条約の批准(1978年10月23日)、かつ中国改革開放の始動の1978年以降、日本の対中国投資が政府資金協力と民間直接投資との2つ方面で推進されてきた実態を考察した。これらのことを踏まえて日本の対中国投資が中国の政治・経済情勢の変化によってどのように変化したか、そして中国の経済発展にどのような影響を与えたか、を分析した。その結果、日本の対中国投資は、次のような5段階、①改革開放の始動に伴なう日本の対中国投資模索期(1978-88年)、②「天安門事件」後の国際経済制裁に伴なう日本の対中国投資低迷期(1989-91年)、③鄧小平の「南巡講話」後、中国改革開放の加速に伴なう日本の対中国投資急増期(1992-97年)、④内陸開発の始動に伴なう日本の対中国投資減少期(1998-2000年)、⑤中国のWTO加盟以降における日本の対中国直接投資の漸増期(2001-04年)、を分けることができた。上述した日本の対中国投資の5段階を踏まえて、1978年以降の日本の対中国投資の特徴および役割は要約された。今後の課題としては、このような現地法人による再投資のケースを検証する必要がある。また日本と中国との政治面における冷え切った現状がこのまま続けば、今後の日中間経済交流に大きな影響を及ぼす可能性があると考えられるので、この視点からの分析も必要であろう。さらにアジア太平洋地域におけるリーダシップを取るべき日中両国が今後どのように周辺諸国を取り込んで、東アジア経済の持続的発展に貢献できるか、その可能性を探りたい。