本研究では、近年中国は、経済発展に伴って産業構造・動態の統計情報、または社会資本ストックの数値情報を把握するために、新しい統計調査整備を迅速的に進めていることについて考察した。特に、1997年に第1次産業を対象として実施された第1次農業センサス、そして2004年に第2、3次産業を対象として実施された第1次全国経済センサスの2つの事業所統計調査について検討した。 中国の第1次全国経済センサスの調査結果、以下の3つの企業基本情報が明らかになった。①全国の第2、3次産業における企業の名称、住所、産業類別、登録類型など基本情報を把握することができた。②企業および事業所別の経営類型、生産販売、原材料消費、財務収支など企業ベースの数値情報に関するリストを作成・整備することができた。③地方別、規模別、産業類別などの様々な綜合的な数値情報を得ることができた。 また本研究では、両センサスの調査結果を踏まえ、1997年から2004年に至るまでの中国政府の固定投資(実質値)の数値情報を加えると、2004年までの中国の全社会資本ストックを推計することが可能であるという結論に結び付いた。 さらに、本研究では日本事業所・企業統計調査との比較も行なった。事業所統計調査の目的、方法、対象については両国ともほぼ一致していると言えるが、調査の項目、産業の分類については多少の差があることを明らかにした。例えば、中国が市場経済を導入しているとはいえ、また多くの国営・国有企業が残存しているため、調査項目には所属関係、執行会計制度類別、労働組合成立状況などが含まれている。また中国では賃貸およびビジネスのサービス業、科学研究・技術サービスおよび地質調査業、水利・環境および公共施設管理業、文化・体育および娯楽業の4つの産業は中国国民経済の中には大きな割合を占め、重点的に調査する必要があったため、産業大分類には単独分類が設けられた。 今後の課題としては、中国の経済社会の進展に伴って、社会資本ストックに関する統計数値情報を整理する必要がある。上述した2つの中国の経済センサスから得られた数値情報を踏まえて、中国の社会資本ストックを推計していきたい。