日本の不動産登記法の制定過程を参照しつつ、台湾における不動産登記制度の成立過程について考察を加えた。台湾総督府文書によって草案内容の変遷を検証するとともに、資本主義経済の進展に伴う抵当権の普及過程や、買い戻し権付売買から近代的な売買への移行等、その社会的影響を含め論じている。登記制度は、経済取引等の複雑化に伴う的確な公示制度への社会的要請から誕生したが、この不即不離の関係は、植民地台湾において色濃く反映された。台湾領有後の喫緊の課題とされた財政改革のために、まず税収確保を目的とした地籍整備が行われ一地一主の土地所有権が確定した点、さらに国内資本誘致のために、登記制度を導入して抵当権の利用を可能にした点、1905年の「台湾土地登記規則」で採用されたドイツ型の効力発生要件主義が台湾の慣習とは相容れず、多くの問題を惹起した点にも論及している。本文・註(日本語訳) 1~77頁本文・註(中国語原文) 78~128頁参考文献その他 129~145頁 計145頁