現行法上では日台共通の用語である「所有権」について、収益重視の台湾と自己使用中心の日本の所有権観念の相違について、歴史的経緯を踏まえて論述した。日本統治時代における所有権思想の変容や、「賃借権の物権化」論の影響などを軸に理論構成を行い、漢人社会の土地所有観念には、「業」という土地経営の理念が強く反映されている点や、日本民法典と台湾の旧慣との対立を緩和するために「衡平主義」的な調停者としての役割を果たした日本人法曹の法的営みを含めて論証した。また台湾漢人社会の収益財的土地所有観は温存され、今なお財産権の中核としての土地所有権の根幹をなすものとなっている点にも論及している。本文・註(中国語) 1~111頁 資料・参考文献 112~131頁 計131頁