日本統治時代の台湾における司法実務の運用について―(pu)耕権をめぐる判例を中心として―
日本の台湾統治期前半は特別統治主義が採られ、旧慣調査に基づく台湾独自の立法が企図されていた時期であった。またこの時期は、日本的な法意識と漢人社会の伝統的な法意識が衝突を繰り返す法制度上の黎明期でもあった。本稿では、当時の台湾法学界に論争を惹起した「(pu)耕権」を取り上げ、台湾の人々の生活に密接な関わりをもつ財産法の分野において、実体法であるはずの民法が存在しない中、日本人法曹が曖昧な「旧慣」のみを拠所とし、いかにして司法実務を行ったかについて論及した。
広島経済大学四十周年記念論文集