近代日本の農村史研究については、従来、地主制史研究として、経済史的な視角に重点が置かれてきた。しかし、それだけでは、近代日本農村における多様な社会関係、例えば親分子分関係や家の継承などの存在を、合理的に説明することができない。それゆえ、前近代的や半封建的などといった概念で、これらの社会関係は説かれてきた。それに対して本研究では、備後地方において、地主家の経営と社会関係や家継承などがどのように関わっていたのかを問題として、具体的には、福山義倉やその担い手の家計の分析と併行して、社会関係の有無と土地取引のパターンにどのような関係があるのか、考察した。