本稿は、廃藩置県の前後における福山義倉の変化と、近世近代移行期の制度変革との関連を明らかにしようとしたものである。その際の分析視角として、①支配権力と義倉の関係、②義倉とその担い手の関係、に着目した。①に関して言えば、近世期の義倉は藩庁との関係を背景として円滑な運営をしていたが、廃藩置県後、県は藩同様の「保護」はせず、そのため義倉はその存在を法制上に位置付けることが求められるようになった。②については、義倉から担い手が受け取りうる経済的メリットを取り上げ、近世近代を通じて家永続保証を受けていたこと、一方で近代では、経営の責任を持つ見返りとして利益分配を得るようになったことを明らかにした。