本研究報告は、伝統的芸術観と演劇観を考察の基軸とし、9.11以降のアメリカにおける演劇の可能性を探ったものである。具体的には、1)古代ギリシャより続く伝統的芸術観と演劇観のあらまし、2)それらを利用した建国期アメリカにおける国家的アイデンティティ形成、3)ポストモダン思想によるそれらの相対化、及びそれらの亡霊的残滓、4)表象不可能性に直面した9.11以降のアメリカ演劇とその研究の動向、以上の4項目である。その結果、現代アメリカ演劇に顕著な亡霊的モチーフに、新たな主体性や身体性の表象を獲得する兆しが明らかとなった。