本研究は数学科教師教育研究である。カリキュラムリソース:教科書等の指導の準備や指導そのもののために使うことのできるすべての媒体を4層に分類し,上層の媒体から下層の媒体へのおきかえを“翻訳(translation)”と定義した。その上で,2019年度教育実習生15人が行った様々な翻訳において使用された媒体とその順序,各種媒体が翻訳に与えた影響に注目し,授業者ごとの授業構想の違いを明らかにすることを試みた。その結果,教育実習生は,授業構想時に教科書の執筆者や生徒の働きを疑似的にしていること,各層の翻訳を経験することによって媒体の働き方が変化していることがわかった。また,授業構想の違いは,翻訳の種類や順序,媒体の使い方の違いとして記述されうることがわかった。